BYD仰望 U9──中国製1300馬力EVスーパーカーは欧州勢を脅かすか
BYD傘下の仰望ブランドが投入したU9は、1300馬力級の4モーターEVスーパーカー。ニュルでのタイム、価格、技術仕様から欧州勢への影響を読み解く。
BYDの高級ブランド「仰望(Yangwang)」が投入したU9は、中国メーカーが初めて本格的に欧州スーパーカー市場へ殴り込んだ象徴的なモデルだ。1台あたり325馬力を発生する4基のインホイール風モーターを組み合わせ、システム合計で約1300馬力。0-100km/h加速は2秒台前半を公称しており、数字の上ではリマック・ネヴェーラやテスラ・ロードスター(新型)に並ぶ領域に踏み込んだ。
4モーター・易四方プラットフォームの意味
U9の核は、BYDが「易四方(e⁴)」と呼ぶ4輪独立駆動プラットフォームにある。各輪に独立したモーターと制御を割り当て、トルクベクタリングを物理層で実現する仕組みで、業界筋によれば応答遅延は10ms以下とされる。これは従来の機械式デフ+ブレーキ制御では到達できない領域で、車両姿勢制御の自由度が一段違う。
仰望U8(SUV)で実証された「タンクターン」「水上走行」のような派手な機能はU9でも継承される一方、スーパーカーとしての主眼はあくまでサーキット性能だ。
ニュルでのタイム、サスペンション制御
仰望は2026年春、U9のニュルブルクリンク北コース計測タイムを公表したと報じられている。詳細値の真偽はまだ業界内でも分かれているが、少なくとも「中国製EVが7分前半に到達した」という事実そのものが、欧州OEMには衝撃だった。
注目すべきはサスペンションの油圧アクティブ制御だ。各輪が±75mmのストロークを独立に動かせる構造で、コーナリング中の荷重移動をモーター駆動と協調制御する。推測になるが、欧州のメガサプライヤー(マニエッティ・マレリ系列など)にとっては、これまで自分たちの牙城だったアクティブシャシー領域を中国勢が内製化した、と読める動きだ。
価格設定と販売戦略
U9の中国国内価格は168万元(約3400万円)前後とされる。ラ フェラーリやポルシェ918の中古市場と真っ向勝負する価格帯ではないが、ランボルギーニ・レヴエルトやフェラーリ296GTBの新車価格と重なる。BYDは欧州販売も視野に入れており、ドイツでのホモロゲ取得作業が進行中と業界筋は伝える。
ただし欧州での販売はEU側の対中EV関税(最大35%強)の影響を直接受けるため、価格優位性はやや薄まる。それでもブランド戦略上、「中国製スーパーカーが欧州で走っている」という事実そのものに広告価値があるという見方が強い。
欧州勢の反応とリスク
フェラーリ、ランボルギーニ、ポルシェの各社は、いずれも2020年代後半にBEVスーパーカーを投入する計画を公表している。が、開発スピードでは仰望が先行している格好だ。特許出願の動向を見ると、4モーター独立制御と高圧バッテリーの組み合わせは、欧州OEMもここ2〜3年で集中して出願しており、技術的ギャップ自体は埋められる範囲にある。
問題はコスト構造で、BYDが垂直統合(セル・パック・モーター・半導体まで内製)で築いた原価優位は短期では追いつけない。スーパーカー領域で価格競争が起こるかは別議論だが、ミドルクラスへの波及は確実視されている。
まとめ──「ニッチ」だが象徴的
U9単体での販売台数は世界で年間1000台に届かないだろう。商業的にはニッチだ。だが、中国EVが「安いだけ」から「速くて高い」へとブランドを拡張する転換点として、業界に残すインパクトは大きい。欧州勢にとって本当の脅威は、U9そのものではなく、U9を生み出せる開発体力とサプライチェーンを中国OEMが手にした、という構造的事実のほうだ。
よくある質問
Q. 仰望U9は日本で買えますか? 正規輸入の予定は2026年6月時点で未発表です。並行輸入は理論上可能ですが、認証取得・補修部品の問題から実用的ではありません。
Q. 1300馬力をどう公道で使うのですか? 基本的にサーキット向けのスペックです。公道モードでは出力・トルク配分が大幅に制限される設計と推測されます。
Q. テスラ・ロードスター(新型)とどちらが速い? 公表スペック上はほぼ拮抗ですが、ロードスターは正式発売・第三者計測が揃っておらず、現時点では比較困難です。
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