登録した99人のうち47人が、1件も作らないまま消えていた — 「引っ越し」を作った理由 — 制作日誌 #22
制作日誌

登録した99人のうち47人が、1件も作らないまま消えていた — 「引っ越し」を作った理由 — 制作日誌 #22

自作アプリの利用者を1人ずつ全件数えた。いちばん大きな穴は解約でも不具合でもなく、最初の1件だった。空っぽの画面を埋めるために他のアプリからの引っ越しを作り、そこで「書き出せないアプリ」という壁にぶつかった。

KIYODO
#個人開発#iOS#Android#データ分析#制作日誌

自作のタスク管理アプリを、身内とテスト用を除いて99人が使っている。今まで「何人が使っているか」は見ていたが、「1人ずつが何をしたか」は見ていなかった。今日それを全件やった。

結果は、思っていたより地味で、思っていたより重かった。

数えた結果

作った件数人数
0件47
1〜3件23
4〜9件13
10件以上16

登録したのに1件も作らなかった人が47人。ほぼ半数だ。

反対側も極端だった。いちばん多い人が112件、次が61件、その次が45件。この3人だけで全体の約4割を占めている。99人が薄く使っているのではなく、16人が支えていて、47人は玄関で引き返しているという形だった。

不具合の報告は来ていない。低い評価もついていない。つまり47人は、壊れていたから離れたのではなく、何も起きないまま閉じた

「使われていない機能」を探す前に

こういう数字を見ると、つい機能の話に行きたくなる。どの機能が使われていないか、どこを直せばいいか。以前の私はそれをやった。

しかし47人には、直す対象の機能すら存在しない。1件も作っていないのだから、ほとんどの画面にそもそも到達していない。直すべきは機能ではなく、最初の1件が生まれる瞬間だった。

残った人は、2つの派に分かれていた

もう1つ、数えて初めて見えたことがある。続いている人の使い方が、はっきり2つに割れていた。

片方は「やること」を書く人。いちばん多い112件の人はほぼ全部がやること側で、別の人は完了率85%という、几帳面としか言いようのない使い方をしていた。

もう片方が予想外だった。予定を42件入れて、やることは1件しか書いていない人がいた。別の人も16件対1件。この層は、タスク管理アプリとしてではなくカレンダーアプリとして使っている

作っている側は「やることを管理する道具」のつもりで作っているが、使う側の半分近くはそう見ていない。そして予定を入れたい人にとって、空っぽのカレンダーは、空っぽのやること一覧よりさらに厳しい。予定は毎日あるのに、それを手で全部書き写せと言われているに等しいからだ。

この2つの数字——47人が0件、続いた人の一部は予定専用——は、同じ方向を指していた。予定を手で書かせるのをやめろ、と。

ついでに、細目(親子でぶら下げる使い方)をしている人は9月も残っていて、使っていない人は7〜8月で止まっている傾向も見えた。ただしこれは人数が少なく、因果はまだ言えない。

ここで手が2つに割れる。

中身代償
案A使い方の案内を厚くする(説明・見本・お手本のタスク)読まない人は読まない。空っぽは空っぽのまま
案B他のアプリの予定をそのまま持ってくる作りが重い。相手のアプリ次第で失敗する

案Aは以前に一度やっている。お手本のタスクを最初から置いておく作りだ。それでも47人は動かなかった。見本は「あなたの予定」ではないから、結局そこから自分の1件には繋がらない。

案Bを選んだ。空っぽの画面に、自分の予定が最初から並んでいる状態を作る。1件目を書かせるのではなく、1件目をこちらが用意する。

「どの形式ですか」とは聞かない

作りで最初に決めたのは、利用者に形式を選ばせないことだ。

引っ越しの画面で聞くのは「元のアプリはどれですか」だけにした。ファイル形式の名前も、変換の仕組みも、画面には出さない。引っ越し業者に「段ボールの規格は何ですか」と聞かれても困るのと同じで、こちらが知っていればいい話でしかない。

入口は3つ置いた。①初めて開いた時の質問 ②やることが1件もない一覧の中 ③設定の中。①だけだと、見逃した人に二度目がない。47人の存在は「見逃した人が半分いる」という証拠でもある。

画面の言葉は7つの言語ぶん用意した。

壁:書き出せないアプリがある

ここで調べて分かった事実が、いちばん大きかった。

利用者の多い共有カレンダーアプリの1つは、公式に予定を書き出せない。 ヘルプに明記されている。外部のカレンダーへ自動で反映することもできず、必要なら1件ずつ手で写すしかない、と。ネット上の解説記事には「共有用のリンクから取り出せる」と書いてあるものもあったが、これは誤りだった。そのアプリの外部連携は入ってくる方向だけで、出ていく道は用意されていない。

つまり、そのアプリの利用者を引っ越しさせることは、こちら側の努力では不可能だ。取り込めるのは、そのアプリが「表示していただけ」の端末側・Google側の予定に限られる。

もう1つ、Web版を終了した国産アプリは、公式の道具で書き出しができた。ただしファイルを読み込む口を付けるには、アプリの土台を作り直す必要がある=有料のビルドが1回増える。ここは次に焼く時にまとめて入れることにして、今回は見送った。追加費用が出る判断を、勝手に前倒ししないためだ。

実機で踏んだ落とし穴

作り終えてから、実機で4つ踏んだ。

1つ目が最悪だった。テスト用に焼いたアプリが、配信済みの更新を自分で取りに行って、焼いたばかりの中身を上書きする。 どれだけ直しても画面が変わらないので、しばらく原因が分からなかった。更新の宛先を一時的にテスト用へ書き換えて焼き直し、画面下の表示が「更新未適用」になることを見て、ようやく自分の変更を見られた。終わったら戻すのを忘れると、今度は利用者に更新が届かなくなる。

2つ目は、画面を閉じる処理より先に「質問はもう済んだ」という印を書いたせいで、閉じる指示ごと捨てられてボタンが無反応になっていた件。3つ目は、保存データの読み込み中は予定が0件に見えるため、「空っぽですね」の質問が誤って出ていた件。読み込みが終わったかどうかも条件に足して直した。

4つ目は取り込んだ後の話で、持ってきた予定には「よそから来た」という印を付け、こちらから書き戻す対象から外した。 外さないと、元のカレンダーに同じ予定が二重に並ぶ。

まだ数字は動いていない

配信は済んだ。iOSとAndroidの全員に届いている。ただし効果はまだ1件も測っていない。47人が減るかどうかは、次に同じ集計をした時にしか分からない。

今日分かったのはここまでだ。99人を1人ずつ数えるのに半日かかったが、「半数が玄関で引き返している」という1行は、それ以前の何ヶ月ぶんの推測よりも役に立った。人数を数えるのと、1人ずつ何をしたか見るのは、まったく別の作業だった。

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