「ビルドするたびに金が飛ぶ」は勘違いだった — 個人開発のビルド代を実額で調べた — 制作日誌 #14
クラウドでiOSアプリを組み立てるのに、1本いくらかかるのか。請求画面を直接開いて調べたら、月額に含まれる枠のほうが大きく、月22本までは追加請求ゼロだった。ついでに、ログの読み違いで1本を無駄にした話も書く。
Macを持っていないので、iOSアプリの組み立て(ビルド)はクラウドのサービスに任せている。ソースコードを送ると、向こうのMacが組み立てて、審査に出せる形のファイルを返してくれる。
このビルドが有料だ。そして私は長いあいだ、**「1本焼くたびに、その都度お金が出ていく」**と思い込んでいた。だからビルドを1本失うたびに、実際以上に痛い気がしていた。
実際どうなのかを、請求画面を開いて確かめた。
実額
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 契約プラン | 月19ドル + 超過分は従量 |
| プランに含まれるビルド枠 | 月45ドルぶん(毎月リセット) |
| iOS 1本の単価 | 2ドル(標準の計算機。上位の計算機なら4ドル) |
| その月の使用量 | 12ドル / 45ドル(6本) |
| 追加請求が始まる本数 | 月22本を超えてから |
つまり月19ドルの中に、22本ぶんのビルドが最初から入っている。私の使い方(月6本)では、何本焼いても追加請求は1円も発生していなかった。
「1本2ドル」という単価表示だけを見て、それが毎回上乗せされると思い込んでいたのが誤りだった。単価と請求は別の話で、枠を使い切るまでは単価が請求に化けない。
混同しやすい2つの費用
もう一つ整理しておきたいのが、年会費とビルド代は別物だという点だ。ここを混同すると「年会費を払っているのに、なぜまた金がかかるのか」という気持ちになる。
| 費用 | 何に対して払うのか |
|---|---|
| 開発者登録 年14,800円 | ストアに出す権利。組み立てはしてくれない |
| ビルドのサービス 月19ドル | アプリを組み立てるMacの計算機代 |
権利と計算機なので、そもそも別のものを買っている。両方要るのは、そういう構造だからだった。
なお、完全に無料にする道はある。自分のMacで組み立てることだ。Macがあるなら計算機代はゼロになる。私は持っていないので選べない。
プランを落とすべきか
無料プランでも月15本まで組み立てられる。実績が月6本なら足りる計算だ。年間で3万円ほど浮く。
では落とすべきかというと、そう単純でもなかった。
| 無料 | 月19ドル | |
|---|---|---|
| iOSビルド | 15本/月 | 45ドルぶん(約22本) |
| 待ち時間 | 優先度が低く、混雑時は90分以上 | ほぼ待たない |
| 更新の配信 | 月間1,000人まで | 月間3,000人まで |
効いてくるのは待ち時間だった。審査に落ちて直して再提出、という局面では、1本の待ち時間が翌日の作業に直結する。90分待ちが数回続けば1日が溶ける。
このときは「審査の対応中で、待ち時間ゼロを買う価値がある」と判断して、当面は有料のまま維持することにした。落ち着いたら見直すという前提付きだ。金額そのものより、何を買っているのかを言葉にできる状態にしておくことが大事だと思っている。
ログの読み違いで1本無駄にした話
同じ月に、この費用の話とつながる失敗をしている。
ビルドを1本走らせたところ、出力の末尾に例外らしきものが出て終わった。私はそれを見て「失敗した=課金されていない」と判断し、そのまま焼き直した。
後で一覧を確認すると、最初のビルドは成功していた。末尾に出ていたのは、組み立てが終わったあとの後処理の警告だった。つまり同じものを2本焼いていた。
- 出力の末尾だけを見て成否を判定したのが誤り
- 成否は、ログではなく**ビルドの一覧(実態)**で確認するべきだった
- しかも「課金されていない」という報告まで一緒にしてしまっていた
枠の中に収まっていたので実害としての追加請求はなかったが、判定の仕方が間違っていたことのほうが問題だった。ログは饒舌で、実態は静かだ。饒舌なほうを信じると読み違える。
個人開発の固定費を並べてみた
せっかくなので、このアプリ群を出すためにかかっている費用を全部並べた。感覚で把握していたものが、並べると見え方が変わる。
| 費目 | 金額 | 性質 |
|---|---|---|
| 開発者登録 | 14,800円/年 | 固定。出す限り必ずかかる |
| ビルドのサービス | 月19ドル | 固定。無料に落とす余地あり |
| 地図・場所の外部サービス | 月97円 | 使われるほど増える |
| サーバー・配信 | ほぼ0円 | 無料枠の範囲 |
固定費と、使われるほど増える費用は、性格がまったく違う。固定費は「出すかどうか」の判断で、変動費は「設計をどうするか」の判断になる。前者は削ると出せなくなるが、後者は設計次第でゼロにできることがある(実際、場所検索は月415円からゼロにできた)。
金額の大きさだけを見ていると、月19ドルの固定費に目が行く。だが長い目で効いてくるのは、利用者に比例して増えるほうの費用だった。
まとめ
- 単価と請求は別。 「1本いくら」を見たら、必ず「枠はいくらか」もセットで見る
- 費用は、何を買っているかで分類する。 権利・計算機・待ち時間は、それぞれ別の買い物
- 成否の判定は、ログの末尾ではなく実態の一覧で行う。 「たぶん失敗した」で焼き直すと、無駄が積み上がる
- 個人開発では、金額の思い込みが判断を歪める。実額を1回調べるだけで、判断が軽くなる
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