表示の0.5%が、収益の6.4%を稼いでいた — 出会い系の広告を止めると決めた日の計算 — 制作日誌 #29
制作日誌

表示の0.5%が、収益の6.4%を稼いでいた — 出会い系の広告を止めると決めた日の計算 — 制作日誌 #29

自分のアプリを開いたら、出会い系サービスの広告が出ていた。止める設定は数分で終わる。問題は、止めると何を手放すかだった。数えてみると、その種類の広告は表示回数のわずか0.5%なのに、収益の6.4%を占めていた。1回あたりに直すと、ほかの広告の約13倍。それでも止めた理由と、ついでに見つかった「入れたのに一度も動いていなかった部品」の話。

KIYODO
#個人開発#広告#収益化#判断の記録#制作日誌

9月22日、自分のタスク管理アプリを開いたら、画面の下の広告枠に出会い系サービスの広告が出ていた。

このアプリは無料で使えて、そのぶん広告を出している。広告の中身は広告会社が自動で選ぶので、何が出るかはこちらでは決めていない。決めていないが、止める権限はある。

止める設定そのものは数分で終わる。この記事で残したいのは、設定の手順ではなく、止める前に何を数えたかだ。この日の判断は、3つの数字でほぼ説明できる。

例えで言うと

アプリの広告枠を、駅の構内にある掲示板だと思ってほしい。

例え実物
掲示板アプリの画面にある広告枠
掲示板の管理会社広告会社(広告を選んで差し込む側)
貼り紙の種類ごとの掲出料広告の種類ごとの単価
「この種類の貼り紙はお断り」の張り札管理画面の「分類ごとの遮断」
別の管理会社にも掲示板を貸す契約広告の仲介(複数の広告会社を競わせる仕組み)

掲示板の持ち主は、貼られる紙を1枚ずつ選べない。選べるのは「この種類はお断り」と種類ごとに断ることだけだ。そして断った種類の分だけ、掲出料は減る。

1つ目の数字:表示回数の0.5%

最初に確かめたのは、その広告がどのくらい出ていたかだった。

広告会社の管理画面には、広告の分類ごとに表示回数と収益を分けて見る画面がある。過去30日で絞ると、「マッチングサービス」の分類は**表示回数全体の0.5%**だった。

200回表示されて1回出るかどうか、という頻度だ。数字だけ見れば、ほとんど出ていない。たまたま自分が引いただけ、とも言える。

ここで「0.5%なら止めても影響はない」と判断したくなる。けれど広告は、出た回数でなくお金で効いてくる。だから次を見た。

2つ目の数字:収益の6.4%

同じ30日で、同じ分類の収益の割合は**6.4%**だった。

表示の0.5%が、収益の6.4%。1回表示されるごとの稼ぎに直すと、6.4 ÷ 0.5 で約13倍になる。ほかの広告が1回出て1円なら、この種類は1回で13円近く取ってくる計算だ。

見方マッチングサービスの広告
表示回数に占める割合0.5%
収益に占める割合6.4%
1回あたりの稼ぎ(ほかの広告との比)約13倍

これが、この日いちばん考え込んだところだった。

利用者が見て嫌な気持ちになりやすい広告ほど、1回あたりはよく稼ぐ。広告主の側が高い値段を出して枠を買っているからだ。掲示板で言えば、「お断りしたい貼り紙」の掲出料が一番高い。

止めた理由

それでも止めた。理由は2つある。

1つは、金額の小ささだ。以前この連載で書いたとおり、このアプリの広告収入はそもそも月に数十円の単位でしか動いていない。その6.4%は、数円の話になる。数円のために、タスクを片付けようとしている人の画面に出会い系の広告を出し続ける理由はない。

もう1つは、見られ方だ。タスク管理やカレンダーは、仕事中にも、人の前でも開くものだ。職場で画面をのぞかれたとき、そこに何が出ているかで、アプリへの信用は簡単に削れる。数円と引き換えにするものではない。

つまり、13倍という単価の高さは本当に効いている。ただ、掛け算の元が小さすぎるので、この規模では信用の方が重い。利用者が何万人もいる規模なら、同じ計算でも答えが変わるかもしれない。そこは正直に書いておく。

止め方:張り札を2枚重ねた

止めるついでに、近い種類もまとめて断った。

やったこと中身
分類ごとの遮断「マッチングサービス」「性に関する内容」「性と生殖に関する健康」の3つを追加で遮断(お酒・賭け事は以前から遮断済み)
広告の年齢区分上限を「成人向け」から**「PG」**(保護者の目が届く程度)に下げた
アプリ側の上限アプリが広告を呼ぶときにも「PGまで」と書き込み、2本のアプリへ配信した

管理画面の設定だけでも効くはずだが、アプリ側にも同じ上限を書いたのは、管理画面の設定がいつか誰かの操作で戻ったときの保険だ。張り札を掲示板の表と裏の両方に貼っておく、という形になる。

アプリ側の変更は、アプリを作り直してストアに出す必要のない種類の変更だったので、費用をかけずにその日のうちに届けられた。

3つ目の数字:4社分の部品が、一度も動いていなかった

この作業の途中で、予想していなかったことが分かった。

アプリには、広告会社を1社に頼らず、複数社を競わせて一番高い広告を出すための「仲介」の部品を入れていた。組み込んでいたのは4社分。ところが管理画面の仲介の設定を開くと、登録されていたのは最初から入っている既定の1本だけで、4社を並べる組み合わせは1つも作られていなかった。

つまり、部品はアプリの中に入っているのに、一度も呼ばれていなかった。表示されていた広告は、全部が1社経由だった。

普段なら、これは「入れたのに動いていなかった」という失敗の話になる。けれどこの日に限っては、都合がよかった。広告の出どころが1社だけなら、その1社の管理画面で断れば、アプリに出る広告の全部に効く。4社がそれぞれ動いていたら、4社の管理画面で同じ張り札を1枚ずつ貼る必要があった。

その日のうちに、もう1つの知らせ

同じ9月22日、広告の仲介会社の1社から、申し込みの返事が届いた。7月19日に申し込んでから65日待った結果は、「現在、新規の登録を受け付けていない」という断りだった。理由の説明はなかった。

仲介を増やせば単価は上がるかもしれない。けれど、そもそも仲介は1社も動いていなかったし、動かしたら今度は遮断の設定を社数分そろえる手間が増える。利用者が100人に届かない今の規模では、仲介を急ぐ理由は薄い、というのが自分の見立てだ。

この日の計算を1行で

数字意味
0.5%断った広告が出ていた頻度
6.4%その広告が持ってきていた収益の割合
約13倍1回あたりの稼ぎの差
4社入れていたのに動いていなかった仲介の部品
65日仲介会社の返事を待った日数(答えは断り)

表示回数だけを見ていたら「影響なし」で終わっていた。収益で見たら、嫌な広告ほど高く売れているという構造が見えた。そのうえで、今の規模では信用の方を取った。

次にこの計算をやり直すのは、利用者が今の何倍かに増えて、6.4%が数円ではなくなったときだと思う。そのときは、断るかどうかをもう一度、数字から決め直す。

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