84人の使われ方を全部数えた — 定着の分かれ目は「1件目を完了できるか」だった — 制作日誌 #18
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84人の使われ方を全部数えた — 定着の分かれ目は「1件目を完了できるか」だった — 制作日誌 #18

自作アプリの利用記録を集計したら、6割が初日で去っていた。しかも離脱者の6割は1件も作っていない。エラーでも課金案内でもなく、最初の1件にたどり着けるかどうかで、その後がほぼ決まっていた。

KIYODO00
#個人開発#データ分析#UX#制作日誌

自作のタスク管理アプリについて、「どの機能を育てて、どれを切り捨てるべきか」を感覚ではなく数字で決めたくなった。利用記録が溜まっていたので、全部集計した。

最初の関門:自分を除く

記録は全部で19,448件あった。そのうち12,447件(64%)が自分の操作だった。

作った本人は、当然いちばん使う。テストもする。だから自分を除かないと、どの数字も自分の使い方に引きずられる。以下はすべて、自分を除いた外部の84人の数字だ。

(余談だが、後日「内部を除くと自分の使い方が見えなくなる」という逆の問題にも当たった。用途によって、除くか残すかを切り替えられるようにしておくのが正しい。)

定着の数字

指標
外部の実利用者84人
1日しか使わなかった51人(61%)
2日以上33人
5日以上13人
10日以上9人
直近7日に触った19人

6割が初日で去っている。この数字自体は珍しくないが、なぜ去るのかが分からないと手の打ちようがない。

分かれ目は「1件目の完了」だった

離脱した群と残った群を、行動ごとに並べた。この表が今回の全部だ。

集団人数起動(平均)1件も作らず作った完了したエラーに遭遇課金案内を見た
1日で離脱513.6回30人(59%)21人4人(8%)22人(43%)20人(39%)
2日以上3346.7回7人(21%)26人(79%)24人(73%)20人(61%)13人(39%)

読み取れたことを3つ書く。

1. 完了経験がある人は、ほぼ残る。 1件でも完了した人は全体で28人いて、そのうち24人(86%)が2日以上残った

2. 離脱の主因はエラーではない。 むしろ長く使う人のほうがエラーに多く当たっている(61%対43%)。当たり前で、長く使えばそれだけ遭遇機会が増える。「エラーが多いから離脱する」という仮説は、この数字では支持されない。

3. 課金案内も主因ではない。 両群とも39%でまったく同率だった。「いきなり課金を見せるから逃げる」という仮説も否定された。

つまり、私が事前に立てていた仮説(エラー・課金案内)はどちらも外れで、効いていたのは最初の1件にたどり着けたかどうかだけだった。しかも離脱者の59%は、1件も作らずに去っている。

何を変えたか

原因が「作成にたどり着けない」なら、打ち手は「作成にたどり着かせる」になる。

それまでのアプリは、初回起動時に見本のタスクを6件置いていた。使い方が分かるように、という親切のつもりだった。だが数字を見ると、これが逆に働いている可能性が高い。

  • 見本が6件あると、一覧が最初から埋まっている
  • 埋まっていると、「まず1件書く」という動線が生まれない
  • 見本を眺めて、閉じて、戻ってこない

そこで見本を全部やめて、最初の1件を書かせる空の状態に置き換えた。副産物として、空のときに出す案内カードがそこで初めて表示されるようになった。それまでは見本6件のせいで一覧が空にならず、延べ1人しか見たことがなかった。

「良かれと思って置いたもの」が、確認したい画面そのものを隠していたわけだ。

見本を消すのは、思ったより難しかった

初期値から見本を外すだけでは、消えなかった。理由が2つある。

  1. 既存の端末は、すでに保存済みの中身が優先される。初期値を変えても影響しない
  2. 新規インストールは、アプリに焼き込まれた古い中身で立ち上がる。起動時の更新取得が間に合わなければ、見本が保存されてしまい、以後どの更新でも消えない

そこで「手つかずの見本がそのまま残っている場合だけ消す」という処理を、起動時に入れた。1つでも触っていれば対象外にして、利用者のデータは絶対に消さないようにしてある。

「機能を消す」のは「機能を足す」より難しい、というのがこの作業の実感だった。

ついでに見えた、使われていない機能

生きているタスク286件・28人ぶんを機能別に数えた。

  • 中核:通知時刻つき24人/繰り返し25人/カレンダー29人/サブタスク10人
  • 芽が出ている:AIの下ごしらえは、試した17人中10人が採用(命中率59%)。触られる回数が少ないだけで、質は悪くない
  • ほぼ使われていない:メモ欄2人・写真4人・電話1人・ピン留め1人・重要度1人・アラーム0人毎月の繰り返し0人

ここで一つ注意が要る。「使われていない」は「要らない」とイコールではない。 後で調べたら、まったく使われていない機能のいくつかは、そもそも入口が画面上に無かった。使えないものは、当然使われない。

数字が低いときに問うべきは「消すか」ではなく、**「届いているか」**が先だった。

まとめ

  • 自分の操作を除く。 除かないと、作者の使い方が全体の傾向に見える
  • 仮説は数字で潰す。 私の2つの仮説(エラー・課金)は両方外れていた
  • 定着の分かれ目を1つに絞る。 「1件目の完了」に絞れたことで、打ち手が具体的になった
  • 親切のつもりの初期データを疑う。 動線を塞いでいることがある
  • 使われていない機能は、入口の有無を先に確認する。 消す判断はそのあと

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